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-対人関係のストレスにもマインドフルネスは有効だと聞きます。苦手な相手に対するネガティブな感情(陰性感情)を自分自身で受け入れるのは、とても難しそうです…。 |
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佐渡:マインドフルネスとは、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶことだと誤解されることがあります。他人に怒らなくなるとか、意見を言わなくなるとか、全てを飲み込むようになるのだと思われることもあります。しかし、それらは全く違います。マインドフルに受け入れるとは、まず自分の感情をありのままに認めるということです。たとえば不当な扱いを受けたり相手の言動で傷つけられたりした時、辛い気分になるのは当たり前のことです。そんなとき「ああ、自分は今すごく傷ついている、怒りを感じている」ということをしっかり認識する。これが「受け入れる」「認める」ということです。自分の痛みや怒りといった感情をしっかり認識することで、その感情にどのように対応すべきか、次のステップを考えられるようになるのです。
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その結果、「やはり嫌なことは嫌だと伝えよう」と自分の感情や考えを冷静に相手に伝えることもあるでしょう。これはとてもマインドフルな行為です。怒りを感じることは問題ではありませんし、それを相手に伝えることも冷静に丁寧に伝えることができれば、何の問題もありません。しかし、怒りを感じた際に、衝動的に激しい言葉で言い返してしまうのであれば、それはマインドフルな対応とは言えないでしょう。
感情を認めるということについて言えば、また、自分の怒りを否認する、つまり自分の中に起きている現象自体を見ないようにする――「こんなことを感じるべきではない。自分が受け入れればいいのだ」という思考もマインドフルとは真逆な反応です。「とにかく言い返さずに黙っておこう」ということが繰り返されれば、自分の中に生じた感情は消化されないまま蓄積されいつか自分自身が燃え尽きてしまいます。ですから自分の中にある感情をしっかり認めることは大事なのです。
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一方で、自分の感情を認めたからといって、それを必ず相手に伝えなければならないということではありません。傷ついたり、怒りを感じたりしている自分を認めたうえで、相手との関係を考えると、ここでこちらの感情を伝えるのはあまり得策ではない、と冷静に判断することもあるでしょう。このように自分の感情をちゃんと認めた上で、意識的に敢えて何も伝えない、という選択をすることはマインドフルな対応です。大事なことは感情や考えを伝えるかどうかではなく、自分の感情を認識した上で、その感情に冷静に意識的に対応できているかどうかなのです。
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-お話をうかがっていると、マインドフルネスはメンタルヘルスを保つだけでなく、複雑な人間関係の中でうまく生きていくスキルの一つでもあるように感じます。 |
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佐渡:そうですね。ただ、マインドフルネス は、どんな人間関係も改善してくれる魔法の薬ではありません。人間関係は、組織風土やパワーバランスなど様々な要素の影響を受けて成り立っています。良好な人間関係の構築のためには、社会構造や労働環境の改善なども重要な要素であり、マインドフルネスはこうした要素の改善を否定するものではありません。 |
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ティク・ナット・ハンというベトナムの禅僧がいます。彼はベトナム戦争に対する反戦運動を米国で展開しました。禅僧であった彼は戦争をただ黙って見ているわけではなく、戦争に対する怒りを冷静にしかし力強くマインドフルな形で広く社会に訴えていったのです。それはマインドフルネスに矛盾することではありません。これはただ瞑想していることだけがマインドフルネスではないことを示す重要な事例だと思います。 |
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-ありがとうございました。 |
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【インタビューを終えて】 |
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佐渡先生のお話から、マインドフルネスとは自己観察のスキルだという印象を持ちました。カッと怒ってしまうなど感情の起伏が激しいと自分自身もストレスによりダメージを受けるように思います。陰性感情が起こっても自分の気持ちに共感したり、少し離れたところから自分を客観視したりすることで冷静になれるのであれば、客先でのトラブルを避けることにもつながるかもしれません。うつの予防など自分自身の健康経営のためにも、マインドフルネスの有用性を知ることができました。私も早速8週間のプログラム、実践してみようと思います。(中保)
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佐渡先生のお話から、マインドフルネスとは自己観察のスキルだという印象を持ちました。カッと怒ってしまうなど感情の起伏が激しいと自分自身もストレスによりダメージを受けるように思います。陰性感情が起こっても自分の気持ちに共感したり、少し離れたところから自分を客観視したりすることで冷静になれるのであれば、客先でのトラブルを避けることにもつながるかもしれません。うつの予防など自分自身の健康経営のためにも、マインドフルネスの有用性を知ることができました。私も早速8週間のプログラム、実践してみようと思います。(中保)
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