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メルマガ2023.06.23

■PE共済会 メールマガジン【 第72号 】

< 共済まんが >「がんばれ! PE(ぺー)助 」
今日もプロエンジニアのお困りごとがないかと街をぶらつくPE助。偶然に出くわした田辺さんとの会話から、PE助の新たな秘密が発覚する。。(まんが 百万 友輝)
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じめじめと蒸し暑いこの時期、体調不良を感じている人は多いのではないでしょうか?梅雨の不調を感じることが多い方の約9割が“やる気低下”に悩むとの報告もあります。
そんな過ごしにくい時期の食事には「酢」を積極的に取り入れていきましょう。胃の働きを整え消化を促進して疲労回復、食中毒予防にも効果があります。最近は食事以外でも水や炭酸で割っていただくフルーティーなドリンクタイプのものも多く売られています。
酢がちょっと苦手という方には、カレーに添えられている「らっきょ」やお寿司の「ガリ」などの付け合せを少し多めに摂るのがオススメです。
さて、今月のコラムはシリコンバレーのIT企業から火がつき、いま世界的に注目されている「マインドフルネス」。日々新たな人間関係を築きながらお仕事をされているプロエンジニアのみなさんにとって必要なスキルかもしれません。 精神医学の専門家の立場から、その有用性と具体的なトレーニング方法を教えていただきます。今月も最後までお楽しみください。
PE共済会 事務局 藤原
はじめよう!
「ジブンゴト健康経営」
< 特別インタビュー>
ストレスマネジメントに役立つ
「マインドフルネス」というスキル
お話:佐渡充洋先生
(慶應義塾大学 保健管理センター教授・精神科医)

聞き手:中保裕子
(医療ライター/有限会社ウエル・ビー)
ルーツは仏教。うつ医療でも期待
―佐渡先生の病院では治療の一環として「マインドフルネス」を取り入れているそうですが、どのようなものなのですか。
佐渡:マインドフルネスについてはいろいろな定義がありますが、私たちは「いま、この瞬間の体験についてそれをありのままに受け入れる、認めるという態度とそのための方法」だと考えています。
マインドフルネスが注目された発端は、1979年にカバット・ジン(Kabat-Zinn)が米国マサチューセッツ大学でマインドフルネスストレス低減法というプログラムを作って、慢性疼痛の患者さんなどに治療を始めたことです。カバット・ジン自身が熱心な禅の実践者で、彼自身の体験を社会で苦しむ人を助けるために活かせないかと考え、プログラム化したのです。仏教で大事にされる8つの実践徳目の1つがマインドフルネスとされており、マインドフルネスストレス低減法で行われる瞑想には、禅や、テーラーワーダ仏教の瞑想技法が反映されています。
やがて1990年代にマインドフルネスストレス低減法と認知行動療法という精神療法とが統合された「マインドフルネス認知療法」が開発されます。これがうつ病の患者さんの再発率を大きく下げることが2000年に証明されたことで、精神医学の領域でもマインドフルネスに注目が集まるようになりました。現在、医療の領域で効果の確立されたプログラムには、「マインドフルネスストレス低減法」や「マインドフルネス認知療法」といったプログラムがあります。これは1回2~2.5時間のクラスが毎週1回、計8回実施されるもので、当院のほか一部の医療機関で実践されています。この他に一般の方が使える個人用のアプリもありますし、企業が研修に取り入れるなどさまざまな形で活用されています。
-海外ではどんなふうに利用されているのですか。
佐渡:たとえば英国ではマインドフルネス認知療法がうつ病の診療ガイドラインに掲載されていますし、まだ研究段階ですが、学校教育にマインドフルネスを取り入れる試みも行われています。マインドフルネスにより10代の学生たちの軽いうつ症状の改善や、将来のうつ病の発症率を低下させられるかといった点について検証が進められています。
マインドフルネスを身に付けるトレーニング
-マインドフルネスはいわゆる「瞑想」とはどう違うのでしょうか。
佐渡:今ここで起きている経験(内的体験、外的体験)をしっかり認識している状態のことをマインドフルな状態(=マインドフルネス)といいます。ですから、瞑想をしていないときでも、たとえばていねいに味わってマインドフルに食事をする、読書のときにページをていねいにめくりその感覚を実感するなど、さまざまな行為をマインドフル に行うことが可能です。むしろ瞑想以外の時間をいかにマインドフルに送ることができるかが重要かもしれません。とはいえ、ただ、理屈がわかればすぐにどんな行動でもマインドフルに行えるようになるというわけではありません。「今ここで起きていることをありのままに認識し、受け入れる」という意識の状態もスポーツと同様、ひとつのスキルですから、練習しないとなかなか身に付かないのです。例えば野球でもバットの振り方を教わったとしても、それだけではすぐに打てるようにならないですよね。毎日素振りをすることで段々と「打つ」というスキルが身についてくるのです。マインドフルネスについても同じことが言えます。今ここにあるものをありのままに認識するという意識の状態を身に付けるために、トレーニングの手段として瞑想を活用するのです。毎日瞑想を実践することでマインドフルネスが段々と体になじんでくると思います。
たとえば、自分の呼吸に1分間だけ注意を向けてみるとしましょう。息を吸うとおなかが膨らんで、吐くとへこむ、この感覚をただ観察するだけなのですが、この1分間に、一度も呼吸から意識が離れない人はほとんどいないはずです。ほとんどの人は「これで合っているのかな」「呼吸ってなんだっけ」「お腹って動くんだ」「なぜこんなことをしなきゃいけないのか」「今日の晩ごはんは何にしようか」…という具合に少なくとも一度は呼吸から意識が離れていってしまうのです。私たちの脳は、たった1分でさえ、自分の感覚をただ観察することができません。自分では集中しているつもりになっていても、実際の集中度はその程度のものなのです。ですから日常生活の中でいろいろなものをありのままにとらえるためには、トレーニングが必要なのです。
慶応義塾大学ストレス研究センターのウェブサイトでは「8週間でマインドフルネスに取り組む方法」をご紹介しています。また、マインドフルネス瞑想をトレーニングできる動画コンテンツも用意しています。1日3~5分でもよいので、ご自身のできる範囲で短いものから取り組んでみてください。どんな場所でもよいのですが、最初は静かな、落ち着いてできる環境の方が取り組みやすいと思います。日常生活の中で、1人になれる静かな時間を作ってみてください。
上記の詳しい情報はこちら
・慶應義塾大学「8週間でマインドフルネスに取り組む方法」PDF
 https://csr.keio.ac.jp/file/howtobemindfulin8weeks.pdf

・解説動画 https://csr.keio.ac.jp/instruction/
「陰性感情」にどう向き合うか
-対人関係のストレスにもマインドフルネスは有効だと聞きます。苦手な相手に対するネガティブな感情(陰性感情)を自分自身で受け入れるのは、とても難しそうです…。
佐渡:マインドフルネスとは、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶことだと誤解されることがあります。他人に怒らなくなるとか、意見を言わなくなるとか、全てを飲み込むようになるのだと思われることもあります。しかし、それらは全く違います。マインドフルに受け入れるとは、まず自分の感情をありのままに認めるということです。たとえば不当な扱いを受けたり相手の言動で傷つけられたりした時、辛い気分になるのは当たり前のことです。そんなとき「ああ、自分は今すごく傷ついている、怒りを感じている」ということをしっかり認識する。これが「受け入れる」「認める」ということです。自分の痛みや怒りといった感情をしっかり認識することで、その感情にどのように対応すべきか、次のステップを考えられるようになるのです。
その結果、「やはり嫌なことは嫌だと伝えよう」と自分の感情や考えを冷静に相手に伝えることもあるでしょう。これはとてもマインドフルな行為です。怒りを感じることは問題ではありませんし、それを相手に伝えることも冷静に丁寧に伝えることができれば、何の問題もありません。しかし、怒りを感じた際に、衝動的に激しい言葉で言い返してしまうのであれば、それはマインドフルな対応とは言えないでしょう。
感情を認めるということについて言えば、また、自分の怒りを否認する、つまり自分の中に起きている現象自体を見ないようにする――「こんなことを感じるべきではない。自分が受け入れればいいのだ」という思考もマインドフルとは真逆な反応です。「とにかく言い返さずに黙っておこう」ということが繰り返されれば、自分の中に生じた感情は消化されないまま蓄積されいつか自分自身が燃え尽きてしまいます。ですから自分の中にある感情をしっかり認めることは大事なのです。
一方で、自分の感情を認めたからといって、それを必ず相手に伝えなければならないということではありません。傷ついたり、怒りを感じたりしている自分を認めたうえで、相手との関係を考えると、ここでこちらの感情を伝えるのはあまり得策ではない、と冷静に判断することもあるでしょう。このように自分の感情をちゃんと認めた上で、意識的に敢えて何も伝えない、という選択をすることはマインドフルな対応です。大事なことは感情や考えを伝えるかどうかではなく、自分の感情を認識した上で、その感情に冷静に意識的に対応できているかどうかなのです。
-お話をうかがっていると、マインドフルネスはメンタルヘルスを保つだけでなく、複雑な人間関係の中でうまく生きていくスキルの一つでもあるように感じます。
佐渡:そうですね。ただ、マインドフルネス は、どんな人間関係も改善してくれる魔法の薬ではありません。人間関係は、組織風土やパワーバランスなど様々な要素の影響を受けて成り立っています。良好な人間関係の構築のためには、社会構造や労働環境の改善なども重要な要素であり、マインドフルネスはこうした要素の改善を否定するものではありません。
ティク・ナット・ハンというベトナムの禅僧がいます。彼はベトナム戦争に対する反戦運動を米国で展開しました。禅僧であった彼は戦争をただ黙って見ているわけではなく、戦争に対する怒りを冷静にしかし力強くマインドフルな形で広く社会に訴えていったのです。それはマインドフルネスに矛盾することではありません。これはただ瞑想していることだけがマインドフルネスではないことを示す重要な事例だと思います。
-ありがとうございました。
【インタビューを終えて】
佐渡先生のお話から、マインドフルネスとは自己観察のスキルだという印象を持ちました。カッと怒ってしまうなど感情の起伏が激しいと自分自身もストレスによりダメージを受けるように思います。陰性感情が起こっても自分の気持ちに共感したり、少し離れたところから自分を客観視したりすることで冷静になれるのであれば、客先でのトラブルを避けることにもつながるかもしれません。うつの予防など自分自身の健康経営のためにも、マインドフルネスの有用性を知ることができました。私も早速8週間のプログラム、実践してみようと思います。(中保)
佐渡先生のお話から、マインドフルネスとは自己観察のスキルだという印象を持ちました。カッと怒ってしまうなど感情の起伏が激しいと自分自身もストレスによりダメージを受けるように思います。陰性感情が起こっても自分の気持ちに共感したり、少し離れたところから自分を客観視したりすることで冷静になれるのであれば、客先でのトラブルを避けることにもつながるかもしれません。うつの予防など自分自身の健康経営のためにも、マインドフルネスの有用性を知ることができました。私も早速8週間のプログラム、実践してみようと思います。(中保)
【プロフィール】佐渡充洋先生
慶應義塾大学保健管理センター 教授。 同大学マインドフルネス・ストレス研究センターにてマインドフルネスの研究に取り組む。専門はマインドフルネス、認知行動療法、医療経済学、産業精神保健学。著書に「マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本」(2018)、監訳書に「幸せになりたい女性のためのマインドフルネス: 自分らしく輝く8週間のプログラム」(2019)他がある。
【ライター】中保裕子
医療・健康ライター。有限会社ウエル・ビー 代表取締役
https://well-be.biz
広告代理店マーケティング企画部勤務、マーケティングコンサルティング会社取締役を経て1993年に独立、フリーランスとして活動後、2003年より法人化。 医療・健康情報の取材・記事執筆やインタビュー調査に従事。
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