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メルマガ2024.04.26

■PE共済会 メールマガジン【 第77号 】

< 共済まんが >「がんばれ! PE(ぺー)助 」
今日はPE(ペー)助開発者のひとり松永さんが来訪。その時突然勢いよくドアが空き。。  (まんが 百万 友輝)
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まもなく大型連休。皆さん予定はお決まりですか?
突然ですが、私が一生のうち一度はやってみたいことのひとつにスカイダイビングがあります。歳を経るごとに段々と遠い夢になりつつありますが、最近、お手軽にスカイダイビング体験ができるものを発見しました。
その名も「インドア・スカイダイビング」。鳥のように大空を舞うということはありませんが、屋内で最大時速360kmの風に乗りながら新感覚の浮遊体験が楽しめるというもの。フライトスーツ・ゴーグル・ヘルメットを装着すれば、さながら宇宙飛行士の訓練のよう。ご興味ある方はぜひ調べてみて下さい。(フライステーション https://flystation.jp/
さて、皆さんは「ヘルスリテラシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
元々幅の広い意味を指す言葉ですが、今回のコラムでは日々医療・健康情報を目にするとき、どのように理解し、役立てていけば良いのか、具体的なポイントをご紹介します。 今月も最後までお楽しみください。
PE共済会 事務局 藤原
はじめよう!
「ジブンゴト健康経営」
< 特別インタビュー>
ヘルスリテラシーを高めよう
―信頼できる健康情報と出会うために―
お話:中山和弘先生
(聖路加国際大学 看護学研究科看護情報学分野教授)

聞き手:中保裕子
(医療ライター/有限会社ウエル・ビー)
あなたは自分の健康づくりに役立つ信頼できる情報に出会えていますか。健康が資本であるプロエンジニアこそ、フェイクに惑わされず、確かな情報を利用して自分の健康づくりに役立てたいものです。
そこで、今回は「ヘルスリテラシー」の向上に役立つ、健康医療情報の信頼性の見きわめ方をご紹介します。
「ヘルスリテラシー」の低さは健康づくりに悪影響
―まず、「ヘルスリテラシー」とは何なのですか。
中山:「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」と同様、健康や医療の情報を入手、理解、評価、活用して適切な意思決定ができる能力を指します。米国などの研究では、ヘルスリテラシーが低いと自己管理のスキルが低い、入院率が高い、検診受診率が低いほか、必要な治療が遅れること、救急車や救命救急センターなどを利用しやすくなるといった問題が生じやすいことがわかっています。
―米国は日本とは健康保険制度と異なるので、救急車やERの利用には膨大な費用負担がかかりますから、健康はもちろん、経済な問題にも直結しますね。
―コロナ禍をきっかけに、テレビやソーシャルメディア(日本ではSNSと呼ばれる)に多くの「専門家」が登場して多くの医療情報が流れましたが、デマも少なくなかったようです。
中山:正確でない情報や広告目的やフェイクなどさまざまなノイズがあります。ITエンジニアの皆さんはITスキル、ネットスキルが高いので情報量が多い分、こうした偽情報に触れる可能性があります。健康医療情報の見極めを一言で言えば、エビデンス、つまり科学的根拠に基づいているかどうかです。科学的根拠をちゃんと示しており、それに従って書かれているかどうかが信頼性のポイントになります。いくら専門家の発言でも、根拠がない単なる「意見」はエビデンスとは言えません。
―つまり、何らかのデータの存在が欠かせない、ということになりますね。
中山:たとえば運動が病気の予防になるとか、ある病気にはある薬による治療効果があるといった、因果関係が客観的に証明されていることが必要です。ただ、データの質にも良し悪しがあり、サンプルサイズが小さいとデータの誤差が大きくなってしまいます。
デマ情報を見抜く5つのポイント
「か・ち・も・な・い」
―中山先生は情報の信頼性を判断する5つのポイントを挙げておられます。
中山: 5つのキーワードの頭文字を並べて「か・ち・も・な・い」と覚えやすくしました。
●「か」=書いたのは誰か
中山:まず、著者や情報を提供している人が誰か、どのような資格を持っているか。ソーシャルメディアでもきちんとした情報発信をしている専門家はいますが、匿名の医師や専門家の情報は、信頼性は低いです。また、氏名や所属を公表していても、それが事実でない場合もあります。その人が所属している(と言っている)組織のウェブサイトで検索すれば、本当にいるのか、どこの所属なのかがわかります。
本当の専門家であるかどうかの見極めは、その分野の研究をし、論文を書いて国際的な学術雑誌に発表しているかどうかですね。科学的根拠が不十分な情報を流している医師は、論文はあまり書かず、著書ばかりたくさん出しているということが多いです。本が売れるように極端な情報発信――いわゆる炎上商法的な煽りをするケースもあります。著者の個人名と「トンデモ」のダブルワードで検索すれば、その人が信頼できない情報を流している可能性を知ることもできます。それを手がかりに、ソーシャルメディアで誰が誰をフォローして、どういう繋がりで発言しているかを見るのもよいと思います。
●「ち」=違う情報と比べたか?
中山:2つめの「ち」は、「違う情報と比べたか」「他の情報と違う点はないか」ということです。
たとえば、「どういう人がある種のがんに◯倍かかりやすい」という数字はエビデンスに基づいたものです。ただ、サンプル数がとても少ないとか、専門家から見れば意味のある差異はない、という場合もあるので、やはり数字だけよりは専門家の意見、解釈と合わせて見られると良いのです。しかし、一般の記者はそれほど知識があるわけではないですから、当事者である企業や研究に関わった専門家の意見と、せいぜい1人の専門家の意見程度で報道してしまいます。新しい治療法や健康情報を、長所と短所をバランスよく提示してくれる中立的な情報提供機関があれば望ましいのですが、残念ながら日本にはそういう機関がないので、私たち自身がひとつの情報で信用するのではなく、いろいろなところから情報を集めなければなりません。
―いろいろ集めると言っても、なかなかハードルが高い気がします…。
中山:基本的には、政府系、行政、WHO(世界保健機関)など公的機関が出しているのは中立的な情報であるはずです。「政府が信じられない」と言われてしまうと何とも言いようがなくなるのですが、少なくとも個人の意見よりは中立的です。
また、治療や検査方法については学会が公表している「診療ガイドライン」を参照するのもよいと思います。「診療ガイドライン」はエビデンスを集積した上で、専門家が吟味し評価してまとめたものです。市民向けに書かれたガイドラインはごく一部の主要な疾患しかないのが難点ですが、論文を検索して読むよりはまずガイドラインを見るのがよいと思います。
●「も」=元ネタ(根拠)は何か?
中山:3つ目は「元ネタは何か」です。元ネタとは根拠のことで、何よりその根拠となる情報が信頼できるのかどうかです。目安としては、出典や引用などがきちんと示され、元ネタの論文などのURLのリンクがついている記事は信頼できると言えます。また、きちんと根拠となるデータがあっても「チェリー・ピッキング」(さくらんぼの実の美味しいところだけを摘み取るように、都合のよいデータだけ抜き出されるという意味)が行われている場合もあります。記事をよく見ると、元ネタはある個人や団体の意見や感想にすぎない場合もあります。見出しに並ぶインパクトの強い言葉につい目を奪われがちですが、それだけで事実や結論とみなさないようにしてください。
●「な」=何のための情報か
中山:4つ目は「何のための情報か」。広告目的で作られた記事は客観性に乏しく、中立でない可能性があります。よく見ないと広告だとわかりにくい記事もありますが、見分け方としては「絶対安全」「必ず成功」「最高」「驚異の」「奇跡」などの修飾語があるかどうか。こういう言葉は本来、客観的な情報提供であれば不必要な言葉です。また、感情や直感に訴えかけてくるような「日本人が知らない」「秘密の◯◯」「メディアが報じない」なども客観的な事実であれば必要がない言葉です。
●「い」=いつの情報か
中山:たとえば、昔は「1日1個まで」と言われていた鶏卵が、2016年に厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では「上限なし」になり、2020年版でまた「脂質異常症の人は食べ過ぎないように」という勧告がつきました。同様に、健康に良くないと言われていたコーヒーが、今やポリフェノールが多く健康的な飲み物と言われるなど、健康医療情報は新たな研究の成果で変わるものです。もちろん、過去の経緯を無視して全く新しく作り変えているわけではありませんが、新しい情報ほど基本的にevidence based、つまり科学的根拠に基づいた情報になっています。ですから、記事の作成日や更新日、本の出版年など最新の情報であることをきちんと示してあるかどうかが大事。健康医療情報の発信者の誠意としてもとても大切なことだと思います。
YouTubeチャンネル「ヘルスリテラシー・健康を決める力」より
https://www.youtube.com/@healthliteracy-skills
胸に「お・ち・た・か」
―ソーシャルメディア中心に対立した意見が飛び交う中、自分の選択に悩むこともあります。
中山:どんな治療・予防法にもベネフィットとリスクの両方があります。意見が対立するのはたいてい、片方はベネフィット、長所に重きを置き、他方はリスクの方に重きを置いています。科学的根拠がないのに「リスクがある」という陰謀論的な意見や、逆に専門家でもリスク評価が難しい問題をベネフィットばかり強調してひたすら説得するという態度は問題だと思います。ベネフィットとリスクをそれぞれ正確に知り、国が行う集団としての行動制限や予防接種など以外に関しては自己判断ということで、両方のバランスを考えて自分の価値観で判断することが大事です。
―意思決定のポイントについては、「お・ち・た・か」とまとめておられます。確かに、腹落ちしないと決められません(笑)。
中山:「お」はオプション、つまり選択肢のこと。「ち」は長所、「た」は短所、「か」は自分の価値観です。対立している意見は長所と短所がわかりやすいので、それぞれを冷静に見て、どちら側につくというより、自分の行動として何を選ぶかというふうに冷静に考えればいい。自分がどう生きて行くかということは、何を選ぶかということです。「どちらが正しいのだろう」と考える必要はないと思います。
YouTubeチャンネル「ヘルスリテラシー・健康を決める力」より
https://www.youtube.com/@healthliteracy-skills
ソーシャルメディアから学べることは多い
―体験談や口コミ情報も多く、意外に説得力が大きい気がします。
中山:体験談はそれだけでは科学的な根拠ではないので「元ネタ」とは言えません。ビフォーアフタ―写真、著名人が使っている等も同じです。ただ、他の人の決め方や考え方を知ることで選び方や価値観を拡げるという使い方はあります。自分の価値観で選んだものを、実際に選んだ人がいるかどうかを知って、自分の選択に自信を持つというような使い方です。ただしひとつの体験談に感動して、「この人と同じようにしよう!」と考えるのは避け、考え方のバリエーションを増やすという程度に利用するのがよいと思います。そもそも体験談が事実かどうかもわかりませんし、アクセス増を狙って創作された可能性もあります。
―ソーシャルメディアの情報には慎重にならないといけないでしょうか。
中山:今まで聞けなかった人の意見や考えを聞けるソーシャルメディアはとても勉強になりますし、私自身も実際にものすごく活用しています。不正確な情報も自由に発信できますから、わざと不正確な情報やフェイク情報を流す人たちがどういう意図で流しているかを勉強する機会にもなり、自分のスキルアップのための情報ツールとしてみればこれほど良いものはなく、誰もが振り回されているわけでもないでしょう。何か答えを探すために使うのではなく、自分の意思決定を学ぶツールとして考えると良いと思います。
【プロフィール】中山和弘先生
聖路加国際大学大学院看護学研究科看護情報学分野教授。
保健医療社会学、看護情報学を専門とし、ヘルスリテラシー(健康を決める力)や意思決定支援、ヘルスコミュニケーションなどをテーマに研究している。
著書:「これからのヘルスリテラシー 健康を決める力」(2022年,講談社)ほか多数
ウェブサイト:「健康を決める力」
https://www.healthliteracy.jp/
【ライター】中保裕子(なかほゆうこ)
医療・健康ライター。
有限会社ウエル・ビー 代表取締役
https://well-be.biz
<略歴>
広告代理店マーケティング企画部勤務、マーケティングコンサルティング会社取締役を経て1993年に独立、個人事業主として活動後、2003年より法人化。 医療・健康情報の取材・記事執筆やインタビュー調査に従事。
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