メルマガ2018.4.27
■PE共済会 メールマガジン【 第27号 】
ご相談のきっかけ
昨年お父様が他界。相続人は母と自分の2人。相続財産は預金のほか、現在お母様が住んでいる家など土地建物。税金面は税理士に依頼し全て解決しているけれど、ご自身の住まいやお母様の住まい、お父様のご実家など将来的に複数の不動産を管理することになり、どうしたらよいかとご相談にいらっしゃいました。ご相談者/プロエンジニアのAさん(首都圏在住、50代)
今回の相談は以下の3本立てになっています。
1.金融資産について
2.不動産について
3.贈与税について
こんにちは。PE共済会のFP相談サービスにお申し込みいただきありがとうございます。今回の相談はもちろん無料です。安心してご相談ください。
初めまして。ファイナンシャルプランナーの古川みほです。お休みのところ、お越しいただきありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
今回、先生に相談することは母には伝えたのですが、母が相続した金融資産が今どうなっているのか、不動産の詳細など、母が話したがらない部分があって。。。
具体的な資料は、今回特に持参して来ていないんです。
分かりました。では、概要をお聞きしながら進めてまいりましょう。
では、資産について、まず確認させてください。
1.預 金:3,000万 母親名義
2.不動産:A氏の住まい、お母様の住まい、他界されたお父様のご実家
ということでよろしいでしょうか?
はい。母名義の預金は、1つの銀行の普通預金か定期預金に入っています。
複数の銀行に分けた方がいいのでしょうか?この預金については、母との会話の中で出てきて分かったものです。
なるほど。では後ほど預金をどうするか一緒に考えましょう。
不動産についてはいかがでしょうか。
今母が住んでいる実家は、母が生きている間に自分(A氏)の名義にしたいと言っています。父の実家は、現在入院中で司法書士が成年後見している父の妹と父で半分ずつの名義になっていました。今回自分が父の分を相続しました。
不動産は他に、現在自分が住んでいる自宅マンションです。
ですから結果、将来的に3件の家を管理する必要があるんです。相続した不動産は、売ってお金にするつもりは今のところありません。
お考え、承知しました。
遺産分割については済んでいるということでよろしいでしょうか?
はい。司法書士から紹介された税理士が遺産分割を手伝ってくれました。
現金は母が、叔母と父の共有名義だった不動産は、父の持ち分を自分が相続しました。
私自身マイホームを購入していますし、子育て中でもある。貯蓄がある方ではありません。ですから将来母親の資産を相続した場合に相続税を払えないのではないかと、そこも心配です。
それではまず、金融資産から話し合ってまいりましょう。
たぶんB銀行(大手地方銀行)に全部入れているはずです。潰れないだろうとは思っています。
確かにB銀行は今すぐどうこうするような銀行とは考えにくいですね。
B銀行が潰れることがなくはない、という前提で申し上げると、普通預金と定期預金に預けていれば、万一倒産した場合でも、預け入れ元本1,000万円とその利息は全額保護されます。ですが、銀行で販売している投資信託など、保護されないものもあります。
定期預金も保護されますか?
はい。ただし外貨預金は保護されません。
外貨ではない定期預金と言っていました。
でしたら1,000万円までは保護されます。ただ残りの2,000万円は破たんしたら減らされてしまいます。なので、破綻リスクを回避するためには、他の銀行に残り1,000万円ずつ分けておく方がいいんです。
ただAさんは、B銀行はそうそう破綻しないとお考えなんですね。そうであれば、大口定期預金を検討するという選択肢もあります。1,000万円以上を預金されている方には、店頭表示金利ではなく交渉次第で金利を上げてもらえます。1つにまとめることで付加サービスを受けられるのです。また、複数に分けることで管理が煩雑になるというデメリットもあるので、破綻の心配が無ければ1つにまとめても良いと思いますよ。
B銀行であれば、格付けが下がるときには新聞に掲載されるはずです。
地元の新聞をチェックするようにしてみます。
ところで、ネット銀行やゆうちょ銀行ってどうでしょう?
銀行であれば、法律の適用という面ではどこでも同じです。
金融資産について、よくわかりました。
実家は約70㎡の木造2階建てです。
今売るなら、土地を含めておよそ1,000万円くらいです。
父の実家は田舎にあり、土地は800㎡ほどの広い敷地に、元々1階建ての建物に2階を増築してあります。敷地内に別棟があります。
今売るなら、土地は600万円、家屋は200万円ほどのようです。
不動産って、難しいですよね。
正直、さわりたくない。できれば放っておきたいところです。
選択肢としては3つです。1.持つ 2.売る 3.資産として運用する
当面換金するつもりはない、ということでしたので「2.売る」はありませんね。
はい。
「1.持つ」場合のリスクとしては、固定資産税がかかることです。ご実家は今お母様が住んでいらっしゃいますが、空き家になると「自宅」ではないため固定資産税の扱いが変わってきます。
とおっしゃいますと?
固定資産税は、3年に1度市町村長が決める固定資産税評価額に対し課税されます。(税率1.4%)
住まいとして利用する土地の場合、土地の広さが200㎡までであれば、
土地の固定資産税評価額の1/6に対して課税されます。
200㎡を超える場合でも、1/3に対しての課税となります。
お母様が住んでいるご実家は70㎡なので、その1/6、約12㎡として固定資産税が課税されることになります。
【計算例】
70㎡ × 1/6 ≒ 12㎡ (固定資産税評価額)
12㎡ × 1.4% = 固定資産税
ただし、空き家になり、一定の「空き家」と認定されると、この特例はなくなってしまいます。つまり、土地の広さそのままに対して課税されてしまいます。
別荘扱いにはならないんでしょうか?
あるシーズンを過ごす別荘は「住むための家」とは認められていません。
一方、週末をそこで過ごすセカンドハウス扱いなら固定資産税の減免が適用されます。セカンドハウスは概ね月1日以上住む、という条件のようです。
なるほど。
父の実家については、叔母のために使って、という叔父の遺言があったので、今売ることはできません。叔母が亡くなったら私のものになりますが・・・
母の実家はセカンドハウスとして過ごしたいと思っています。
セカンドハウスと認められるかどうか、念のため、役場か管轄の税務署に確認されるとよいと思います。
そんなに広い土地のところであれば、貸す、という選択肢はないんですか?
個人ではできないので、請け負う会社があればいいんですけど。でも貸すとなると空室リスクとかいろんな費用がかかり、負担も強いられることになります。なので、アパート経営とかは考えていません。田舎なのでそもそも固定資産税が安いので、放っておいてもいいかな、と思っています。
そうですね。固定資産税評価額は売買価格のおよそ7割の額ですからね。
父が存命中、B銀行の営業マンが来て、売りたければ業者等を紹介しますと言われたことがあります。お金に余裕があれば建て替えたいですが、今はその余裕が無いので、放っておくことにします。
投資したらしたで、いろんなリスクがでてきますしね。空室以外にも家賃滞納や保険など、たくさん考えないといけませんし。
ご参考までに。空き家防止のために売却したという意味で、市区町村からの助成金があるところもありますよ。
そうですか。調べてみます。
実は、現金を相続した母親には建て替えたら、と言われるんです。でも、自分はそういった金銭的余裕がない。母とはそのあたり温度差があるんです。
1つ注意点を。登記簿はどうなっているでしょうか。
相続人に変えていない場合が結構多いようです。共有名義の人が増えると後々大変なので、そこは早めに整理された方がよいと思います。
なるほど、そうですね。私の名前になっていないと、後々子どもたちが苦労することになるかも知れません。会ったこともない親戚と、土地についてやんやすることになりますからね。
不動産の運用についても方向性が固まりました。もう1つ、よろしいでしょうか。
将来、母の預金を相続する場合のことなのですが。相続人は私だけなので、相続税が払えるか心配なんです。
そこで、母が存命の今から母の預金を私に移転する場合、2月のメルマガでは年間110万円までなら贈与税がかからない、ということでいいんですよね?
110万円の「暦年贈与」についてはご理解のとおりです。
そうですか…
毎年110万円の贈与は毎年母親に小遣いをもらっている感じがしてこそばゆいんです。それであれば、税金納めた方がいいと思っています、正直なところ。
毎年手続きをするのがお嫌であれば、「相続時精算課税」を利用するのも選択肢の1つでしょう。相続時精算課税制度は贈与税対策として利用される制度で、贈与した時点では税金がかからず、贈与した方が亡くなった時に相続財産にひっくるめて相続税を計算する、という制度です。
ご参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4503.htm
(国税庁ホームページ「相続時精算課税選択の特例」)
贈与したうち2,500万円を超えた分の税率は一律20%(2500万円までは贈与税非課税)です。土地とか株式とか値上がりしそうなものを前もって贈与することで、相続時点での財産額を見た目下げられるというメリットがあります。
ただしお母様からの相続が発生した場合には、この2,500万円の贈与がなかったものとして相続税を再計算しなくてはなりません。
なお、暦年贈与(年間110万円)と相続時精算課税制度はどちらかしか選べない点に注意が必要です。
めんどくさい、って言ってられない感じですね。よくわかりました。
お母様が他界された時、相続税がかかるかどうかもチェックしておいた方がいいですね。法定相続人が1人なら、3,600万円までは相続税がかかりません。でもそのためにはお母様に財産を全部聞かないといけない、という高いハードルが・・・
もしなんとなくでもお母様とお話ができれば、相続税の早見表があるので検討することはできそうです。その上で、相続時精算課税制度か暦年課税のどちらかが適しているかがわかるのではと思いますがいかがでしょうか。
結構具体的になってきたのでは?
ゆる~く考えていましたが、具体的に考えなきゃ、とはっきりわかりました。
家の修繕も先々発生するでしょうし、女性の平均寿命が延びているので、母が3,000万円使い切るかもしれない。
そうですね。その可能性も十分ありますね。
大変勉強になりました。知りたいことは全て教えていただけました。
お疲れさまでした。
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暮らしのお金の保健室 古川みほ
暮らしのお金の保健室 代表 http://www.fpmiporin.com/
旅行会社、電話会社、保険代理店、損害保険会社、投資顧問会社、生命保険会社に勤務後、
2000年にフリーランスとして独立。生涯の生活設計・家計診断・保険の見直しを専門とし、相談、講師・講演、FP養成講座テキストなどの執筆および監修を行う。
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それでは、今月も最後までお楽しみください。
PE共済会 事務局 藤原